オクタン価 RON&MON
密度
酸素含有量
蒸気圧
蒸留性状



【オクタン価 RON&MON】

Octane Number-オクタン価とは、アンチノック性を表す価で、数値が大きいほどノッキング(スパーグプラグによる点火ではなく、スキッシュエリアなどで自己着火してしまう現象)を防ぐ性能が高いといえます。ノッキングはエンジンにダメージを与えるので、オクタン価が高いほどエンジンを保護する性能が優れているといえます。

アンチノック性能が高ければ、エンジンの圧縮比を高くできるので、結果としてエンジンの出力、効率が高まります。

RONはResearch Octane Number-リサーチ・オクタン・ナンバーの略。一般的に用いられているオクタン価表示です。日本ではハイオクがRON:100、レギュラーが91程度です。

MONはMotor Octane Number-モーター・オクタン・ナンバーの略。通常用いられていないオクタン価表示です。日本ではハイオクがMON:89、レギュラーが83程度です。

RONとMONの違いは、測定条件の違いで、RONは低回転、低吸気温度時のオクタン価、MONは高回転、高吸気温度時のオクタン価と区別されます。一般的な走りで、特にアンチノック性を要求されるのが、低速時からの加速などですので、RONというのは一般車両のインデックスとして適当であるといえます。

競技用途では、MONが重要になります。圧縮比が高く、あるいはターボなどにより、実質的に圧縮比が高くなり、かつエンジン回転数が高いレーシング・エンジンでは、MONの価が意味を持つわけです。エルフのレーシングガソリンは、このMONの領域をさらに超えた高回転、高吸気温度域でのアンチノッキング性に優れると評価いただいています。(ご愛用いただいているファクトリーのエンジニア談)

なお、AKI(アンチ・ノッキング・インデックス)という、RONとMONの平均値を使用する例もあります。アメリカでは一般的です。読み方自体は全く一緒です。

なお、オクタン価自体はエンジンの出力には何の関係もありません。出力は燃料の持つ熱量(カロリー価)がキーファクターであり、例えば一般のハイオク、レギュラーとも熱量はほぼ同じで変わりません。


【密度】

摂氏15度のときの、燃料の重さです。温度が高くなると軽くなり、低くなると重くなります。JIS規格では、ガソリンの場合0.783(摂氏15度時)以下であることが定められています。一般的に重いほど、熱量が高くなりますが、揮発性が悪くなり、ドライバビリティが悪くなるという傾向にあります。

過去においては、ターボ時代のF1エンジンには、密度が0.810程度の非常に重い燃料が仕様されたことがありました。これは熱量を確保するためであり(炭素分子、Cが多ければ多いほど熱量が高くなります。)ましたが、揮発性が悪いので、吸気温度が高いターボエンジンにおいてもエンジンストールなどがよくあったと記憶しております。


【酸素含有量】

酸素を燃料の中に含める場合、原則的に熱量は下がることになります。つまり、炭素分子=Cの量が減るので。しかしながらメリットとして、オクタン価を上昇させる効果、気化潜熱を高める効果、燃焼スピードを高める効果の三つの効果があります。

気化潜熱とは、液体が気化するときに周囲から熱を奪う現象であり、吸気温度を下げ、さらにそれにより空気の密度が高まり、シリンダーへの充填効率を高める効果をもたらします。高回転のF1エンジンではこの効果を最大限に利用するなどして、実際には排気量の40%増し位の燃料と空気を充填しているといわれています。

燃焼スピードについては、酸素を含む成分は助熱剤と呼ばれており、高回転のエンジンにとっては重要な要素であると考えられます。

酸素含有量は、空気比に影響を与えます。


【蒸気圧】

蒸気圧とは燃料の揮発性を表す数値です。JIS規格では0.44Barから0.78Bar(37.8℃時、JISではkPa表示のため44から78までとなります。)と規定されています。高すぎると夏季、フューエルライン中でヴェーパーロックが発生しやすくなります。逆に低すぎると冬季において、ガソリンの蒸気がしにくくなり、エンジン始動性に問題が出ることがあります。一般のガソリンでは、冬季と夏季でこの蒸気圧を違えて販売されています。また、北国と南国では当然この価が異なるわけです。なお、JISには補足があり、寒候用では上限が98kPa、夏季用では65kPaとなっています。


【蒸留性状】

エルフでは、ヨーロッパ式に70℃のときの留出量と、100℃時の留出量を表示しています。JISでの規定は、10%、50%、90%留出するときの温度範囲を示しています。

70℃時の留出量は高いほどエンジン始動がしやすくなります。逆に高すぎるとヴェーバーロックを起こしやすくなります。

100℃時の留出量は、加速性能との関連があります。一般に数値が高いほうが加速性がよくなり、低いと悪くなるという関係にあります。