■ 燃焼スピード
■ 空燃比(くうねんひ)
■ FIA・FIMレギュレーション
■ エンジンの種類による燃料性状・成分の違い
■ 理論と実際
レーシングフューエルにおいて最も求められるのがこの燃焼スピードです。スパークプラグにより着火されてから、シリンダーの最周辺部まで早く燃焼し切れればそれだけガ ソリンの持つ燃料を効率的に出力に代えることが可能であり、また、それだけ無理なくエンジン回転数を上げられることになります。レーシングエンジンの場合、ボア径が大きいので、特に効果的な要素です。
燃焼を解析した場合、シリンダーヘッドのほぼ頂上にあるスパーグプラグから、スキッシュエリアまで火炎が伝播しきるのに、排気バルブ方向には、その熱のためもあり、速く到達しますが、吸気バルブのほうにはやや遅く到達する傾向があります。(吸気バルブのほうがやや大きいせいもあります)ファクトリーのエンジニアによると、エルフのレーシングフューエルの場合、この差がほとんどなく、均一に広がるとのコメントがありました。
燃料と空気の割合(比率)を示す値です。この場合、重量比であり、容量比ではありません。
一般的なガソリンではガソリン1に対して、空気が14.7というのが理論空燃比は空気量が若干少なくなっているケースがあります。
エルフではFIA(世界自動車連盟)、FIM(世界モーターサイクル連盟)公認のレースで使用するため、それらのレギュレーションにミートする燃料を用意しています。成分も厳しく制限されており、発がん性をもつ物質などは、ほとんど使用できなくなっています。従って、燃料のクリーン度は市販ガソリン以上となっています。
エルフでは一般のモータースポーツ愛好家のため、レギュレーションとは別に性能を追求した燃料も用意しています。
エンジンの種類により、燃料への要求性能は異なります。F1がNAからターボ、そして再びNAへと変化していき、またモーターサイクルGPへの燃料開発で2サイクルエンジン、そして4サイクルエンジンへの流れの最先端で技術開発をしたため、どのように異なるのかを熟知しているのがエルフのアドバンテージです。概略であり、例外、違ったアプローチがないわけではないことを、ご理解のうえ、参考にしてください。
2サイクルエンジン;デトネーションが大きな問題となるため、また、競技用ではオイルと混合して使用することになるため―混合によりオクタン価が低くなります―、高いオクタン価が必要となります。レーシングエンジンの場合、ピーキーな出力特性が一般的なため、ガソリンサイドからのアプローチとして、アクセルのコントロール性のよさが求められることがあります。ただし、ライダーの好みによりこれは異なり、あるいはライダーはドッカンタイプのガソリンを、別のライダーはジンワリとした加速をする燃料を好むといったことがあります。この辺の味付けは、技術によるものです。
4サイクル・ターボチャージドエンジン;圧縮比が事実上高くなるため、オクタン価が高いほうが有利となります。これは出力面だけでなく、エンジン保護という面から見た場合においてもです。また、インタークーラーを装着していても、吸気温度が高いため、蒸気圧はNa用燃料に比べ、高く設定される傾向があります。また、燃料の熱量をできるだけ高めることを目的に密度を高くしているケースが多くなっています。2サイクルエンジン用の燃料とは、要求される性能が比較的似通っています。
四輪車用4サイクルNAエンジン;車両によりも異なりますが、一般的にピークパワーを優先した燃料設計がされています。気化潜熱により充填効率を高めることを狙っています。そのため、吸気温度のデータが重要視されます。最近はレースにおいても燃費がポイントとなるので、燃費を良くするため、できるだけ密度の高い燃料とすることもひとつのアプローチです。ただ、その場合、ドライバビリティが悪くなる傾向があり、かえって燃費に悪影響与えるケースもあるようです(無用なアクセル操作が増える?)。さらに、燃焼スピードの速い燃料が特に求められます。F1におけるエンジンの高回転化にあたり、エルフが開発した燃料技術が大きく貢献したことはいうまでもありません。
二輪車4サイクルエンジン;四輪車用NAエンジン用燃料との違いは、ピークパワーよりも過渡特性に重点が置かれた設計となっている点です。これは、例えば同じサーキットにおいても二輪の場合、四輪車に比べ全開時間(期間)が短く、パーシャルでのコントロール時間が長いということに起因しています。また、MOTO GPにおいては、燃料タンク容量が厳しく制限されているため、より絞れ、燃費を良くできる燃料が必須となります。鈴鹿八耐のような耐久レースにおいても燃費のよさは、ピットイン回数を減らせるという重要な要素のため、燃料が非常に重要とされています。ここにおいてもエルフの燃料には大きな利点があります。
データの見方を説明しましたが、ガソリンはその使い方とエンジンの性格、つまりセッティング(エンジンマッピング)の仕方で、よくも悪くも大きく変わります。データはあくまでも目安であることを忘れないでください。