JET SKI KING’S CUP 2013
WORLD CUP GRAND PRIX
日時:2013年12月4日-8日
場所:タイ パタヤ
結果:総合4位
今年もこの季節がやってきました。
タイ王国で年に一度行われるJETSKIの大会です。
アメリカのレイクハバスで行われるワールドファイナルに続くビックイベントです。
この大会は日本からもたくさんのライダーが出場するのでタイチームの次に大所帯です。
レース会場のパタヤは海が綺麗で人も優しく、なによりマッサージが安くて最高の町です!
7日午前の一番最後に自分が出るプロランナバウトオープンのMOT1が有りました。
スタートラインには同じマシンに乗る、去年のSKIとランナバウト両方の全日本チャンピオンを取り今年世界でも3位に入った竹野下プロ。
同じマシンだけに絶対に負けたくない相手です。
そして今年全日本チャンピオンになったHKSマシンに乗る砂盃プロ、チームはワークス体制だし、ライダーは世界でも名実ともにトップクラスの砂盃さんなので強敵の一人ではありますが、今まで海外戦では負けたことが無いので今回も負けられません。
そして3年連続世界チャンピオンを生み出したSEADOOセンターの艇が6艇。
天才メカニック、フランコがメカニックを務める、元SKI世界チャンピオンのボッティーと層々たる顔ぶれ。
出遅れたら到底抜ける相手じゃないしMOT4まである事を考えると先行逃げ切りでマシンを労わった走りに専念するのがベストだと思いながらスタートラインに並びました。
最初にバケツの中からピンポン球を選び、そこに書いてある番号が自分のグリッドになります。
自分は18を引いたのでアウトコースの外から2番目でした。
という事は全部で20艇位並んでいる事になります。
万が一、先頭で吹っ飛んだら絶対に後続艇に引かれる可能性大なので無理せず安全第一で行こうとスタート前に思いながらスタートを待ちました。
そしてスタート。
まあまあのスタートで自分よりイン側には去年ここで優勝したタイの英雄T6のウェラポン君、その内側にはハバスでもぶっちぎりで速かったハンガリーのH5 KASZAが居ました。
3台同時に1ブイ、2ブイと曲がって行きましたが一番外の自分はかなり不利でイン側に居るマシンの波しぶきで何も見えません。
仕方が無いので大回りをしながらも全開でスピードを乗せて行くとハンガリーの選手には追い付かなかったもののT6には並ぶ事が出来たのでそのまま全開でT6と並んで6ブイまで行きここでやっと初めての右コーナーが来たので形勢逆転で自分がイン側になりそのまま前に出て次のブイでイン側を閉めてインコース2番で合流、ハンガリーのH5に続いてインコースのTOPでタイのエースT4、続いて自分と総合3位でホームストレートを通過出来ました。
ここまでくればあとはマシンを壊さず、落水する事無く無難に3位以内通過を目指して走る事に集中しました。
1位のハンガリーのマシンはぶっちぎりで速かったのですが、やはり壊れて途中でリタイヤでした。
その結果なんと2位でゴール。
4回も走るKING`S CUPは、やはりかなりのサバイバルレースで壊れない者勝ちでもあるので自分達もハバスよりはブーストを下げて壊れないようにしていました。
しかし自分のマシンもラスト2周目で急にフケが悪くなり最後の周はゴール出来るかな?位だったのでインスペクションを受けてからすぐに今崎さんに症状を伝え修理する事になりました。
午後のMOT2
さっきの着順で好きな場所を選べるので自分は当然2番目に場所を選べました。
自分はアウトコースの1番イン側を選択しました。
スタートと同時にアンチラグのボタンを離したのですがいつもよりスタートが出ず、すぐにまたさっきの症状が出てフケなくなりました。
色々試しましたがどうやっても回転数が上がらずツーリング状態でそのままゴール。
結果は走っている中では最下位の13位でした。
エンジン系が壊れた訳ではないので最後まで走る事は出来たのですが優勝するのはかなり難しい感じになって来ました。
マシンを一度ホテルに運び今崎さんが調べるとターボのフランジに亀裂が入りそこから排気漏れしていた為フケなかったことが分かりました。すぐにターボを外し現地の人に溶接出来る所を聞き持って行き、修理は無事に終わりました。
8日
まずは昨日のリザルトを見に行きましたが今の所19台中5位。この位置ならまだ表彰台圏内だし自分より上のマシンが壊れる可能性もあるのでまだ望みはあると思いました。
MOT3。
自分はアウトの外から2番目のスタート。
スタートと同時に飛び出しそのまましばらくは斜行を取られないようにまっすぐ行きイン側を見ると竹野下プロが並んでいました。
そこからイン側に寄せて行ったのですが同じスピードなのでイン側に居る竹野下プロを被せきれずに物凄い水しぶきをくらいながら一緒に曲がっていると突然目の前の竹野下プロが空高く飛んで行きその下をマシンが縦回転しながら飛んで行きました。
手前に1台と人が見えたので誰かとぶつかったのが分かり竹野下選手をとっさに探すとライフジャケットがかろうじて水面に出ているのが確認出来たのでこれは死んだかも?と思いすぐに助けに行かないとヤバいと思いました。
一刻を争う事態であれば早く行かなくては、と思った瞬間赤旗が遠くで見えたので後方を確認してすぐにUターンして竹野下プロを助けに行きました。
辺りにはパーツが散乱し事故の凄さがわかりました。
竹野下プロはマーシャル艇の上に救助されていて、「大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫!」と言って来たので一安心。
マーシャルにも戻れと言われたのでひとまずスタートラインに戻りました。
ぶつけた選手はそのままスタートラインに並んでいましたが、あっちこっちをガムテープで貼り付けていました。
暫くして仕切り直しのスタートです。
スタート直後は良かったものの、またすぐにフケなくなり、またまたツーリング状態。
何なんだろう?と思いながらも少しでも順位を下げないようにインベタでブイを回りなるべく抜かれないように走っていると自分より速いマシンがドンドン壊れていきました。
終わってみれば完走出来たのは11台。約半分がリタイヤしていました。
そしてフケないマシンでも抜かれず頑張って走ったらなんと5位でゴールだったのです。
本当にサバイバルレースです。
どんなに速くてもゴール出来なければ意味が無いと改めて実感しました。
インスペクション終了後今崎さんに症状を伝えたところ、スペアー艇でMOT4は出ようという事になりました。
ターボには速さで負けるスーパーチャージャーですが、乗りやすいし壊れにくいという事で急遽スペアー艇を取りに行きました。
しかし問題が一つあります。
スペアー艇はGP用で今回の重量制限をクリアー出来ない程軽く出来ているのです。
とはいえ、今更重りを載せても操安が狂うので危ないという事で燃料を溢れる位入れて運が良ければ重量制限もクリアー出来るかもしれないと言う感じで出る事になりました。
3位以内に入れないなら賞金は0円なので最後位、順位を気にせず思いっきり走って来い!と言う今崎さんの気持ちも有ったと思いますし、このエンジンはこのままドバイに持って行きオーバーホールするから壊しても良いよ!と今崎さんに付け加えられたので自分も壊れるまで握って行くつもりでMOT4のスタートラインに向かいました。
マシンチェンジをすると何故かアウトコースの一番外側からのスタートしか出来ないと言われたのでそこからのスタートになりました。
スタートと同時にアクセルを握ったら、は?と思う位走らない。
周りは皆きれいにスタートしているのに自分は完全に置いてきぼり。
エンジン回転数を見ると6千回転。
どうやってもこれ以上エンジンが回らない。
自分には全然意味が分かりませんでした。
スタート前にちゃんとテストをして何も異常が無かったのに何故?
しかもスタートと同時に何かが壊れるなんて。
今年は運が無かったんだと諦めながらもまたインベタでブイを回りながらのツーリング。
そして7位でゴール。
自分以外のマシンも壊れまくっていたので6千回転でも走っていれただけ良かったみたいです。
総合では5位以内位入っているらしく1番から5番までのマシンは一度陸に上げて重量を量るからそのまま待機しろと言われました。
総重量が340kg以上ないと失格になります。
マシンにはあちこちテープが張られ、重り等を後から入れられないようにされました。
1番から順番にマシンを量っていると自分の前の選手が340kg以下で失格になりました。
自分もやばいな~と思いながら陸に上げると船内の水を斜めにし、全て抜きその後エンジンを掛けエンジン内の水も全て出し、中を隅々まで調べてから重量を量りました。
そして重量計に出た数字は341kg!
まさに奇跡です。
インスペクターもそんな偶然ある訳無いとばかりに降ろしてからも各部をしつこくチェック。
シートの裏もしつこく見ていましたが不正は無いという事になりOKが出ました。
その瞬間周りのギャラリーからは拍手が起こりインスペクターからはラッキーボーイと言われました。
今思えばあの時壊れないで普通に走っていたら燃料の消費量が多かったので340kgを下回り失格になっていたのは間違いなかったのです。
1周でもまともに走っていたらアウトだった事を考えると本当にラッキーだったと思います。
その後今崎さんが故障の原因を調べると電装系の部品が一つ壊れただけだったのですがそのおかげで回転が上がらず燃料消費量が少なく、結果総合4位。
HKSの砂盃選手が3位獲得という嬉しい結果でした。
何とも複雑ですが表彰台は5位までなので乗れただけでも良かったと前向きに思う事に。
これだけのメンバーの中プロクラス初挑戦で4位はそんなに悪い順位じゃないと自分に言い聞かせ悔しさをバネに変えて来月からのUAEツアー戦に挑みます。
今回も応援頂き有難う御座いました。
これだけのトラブルが有ってもエンジンは全く何ともないのはELFオイルのおかげです。
今回私が使ったオイルはelf HTX805 5W50です。タイの湿度でも変わらず高性能を維持できたのはこのオイルのおかげです。
年末からのドバイ、アブダビ戦もこのオイルで優勝を狙って行きたいと思っておりますので今後とも宜しくお願い致します。
マリンメカニック#86 生駒 淳